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ヘヴィーな映画でした・・・。 内田樹さんのブログの1月26日のエントリーで、 「PFLPやバーダー=マインホフやジョルジュ・ハバシュやゴルダ・メイヤという名詞が何を意味しているのか知らないと、映画の登場人物たちが何の話をしているのか、よく(というかぜんぜん)わからない。」 という記述を読んだので、事前にネットで近代中東史を軽く復習。 「1972年8月のミュンヘン・オリンピックの際、イスラエルの選手を人質に取り、最終的に11人を死に追いやったパレスチナの解放を主張する「黒い9月」の黒幕を追い暗殺するイスラエルの情報機関「モサド」のメンバーの目から描かれているが、決して、殺し屋が敵を追うサスペンスとして描かれているわけではない。殺す者の側からの視点であるが、彼らに次第につのる疑問と苦悩の描写のなかで殺される者の死の不条理さがうきぼりになる。」 と、粉川哲夫さんが書かれていましたが、1月14日の樋口泰人さんの日記にも、 「人はみな、たったひとりで死んでゆかねばならないことをこんなにしつこく堂々と見せた映画はかつてあっただろうか。」 とありました。 プロダクション・ノートによると、「70年代の気骨ある映画作りのスタイルに耳を傾けたい」というスピルバーグの要望に答えるべく、撮影監督のヤヌス・カミンスキーは「フレンチ・コネクション」「パララックス・ビュー」「コンドル」などを参考にしたそうです。 時折、渇いた70年代の画面が恋しくなる私としては、何故か「ラスト・ラン」や「ジャッカルの日」といった70年代の映画を無性に見返したくなりましたが、「ミュンヘン」で情報の売買を行う“パパ”役のミシェル・ロンズデールは、ジャッカルを追いつめる警視を演じていたんですね。 あるいは、ヴェンダースの映画や「新・ドイツ零年」に出演していたハンス・ツィシュラーが文書偽造のスペシャリスト“ハンス”を演じていましたが、「新・ドイツ零年」と言えば、孤独が画面に張り付いているような映画で、訳もわからず涙を落としていました。 「ミュンヘン」はとにかく悲しい。胸が苦しくなる映画です。 暗殺計画を実行する主人公たちが一堂に会して食事をするシーンにしても、これまであったことと、これから起こる不条理な出来事を思うと、悲哀に満ちたシーンにしか見えない。 唯一和むというか、安らぎを覚えるのは、主人公たちが敵であるパレスチナ・ゲリラと偶然一夜を共にし、ラジオのチャンネル争いをするシーンのみでしょう。 町山智浩さんの言うとおり、そのときラジオから流れるアル・グリーンの「レッツ・ステイ・トゥゲザー」に、スピルバーグの願いが込められているのだと思います。 ラスト、スピルバーグは、世界貿易センタービルを登場させます。 スコセッシの「ギャング・オブ・ニューヨーク」のラストにも墓標のように登場していましたが、「ミュンヘン」のWTCはどこまでも重く、暗澹たる気持ちにさせられます。 この不条理感は、あとどれくらいで解消されるのですか。 それとも、解消されることなど、ないのでしょうか。 ■ミュンヘン (公式) ⇒http://munich.jp/ 2005年/アメリカ/アスミック・エース/164分 英題 : MUNICH 監督 : スティーヴン・スピルバーグ 出演 : エリック・バナ、ダニエル・クレイグ、キアラン・ハインズ、マチュー・カソヴィッツ、ジェフリー・ラッシュ、ハンス・ジシュラー、ギラ・アルマゴール、イヴァン・アタル、マリ=ジョゼ・クローズ、マイケル・ロンズデール、マチュー・アマルリック 【批評・評論・レビュー・コメント】 ■内田樹の研究室 ⇒http://blog.tatsuru.com/ ■粉川哲夫の【シネマノート】 ⇒http://cinema.translocal.jp/ ■boid日記 (樋口泰人) ⇒http://boid.pobox.ne.jp/contents/diary/boiddiary/boid2006_01.htm ■eiga.com [新作映画評] (町山智浩) ⇒http://www.eiga.com/review/munich.shtml ■ベイエリア在住町山智浩アメリカ日記 - スピルバーグの「ミュンヘン」は凄かった! ⇒http://d.hatena.ne.jp/TomoMachi/20051206 ■ベイエリア在住町山智浩アメリカ日記 - 『ミュンヘン』の元ネタ①ブラックセプテンバー/五輪テロの真実 ⇒http://d.hatena.ne.jp/TomoMachi/20060125 【関連作品】 スポンサーサイト
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1972年9月。ミュンヘン・オリンピック開催中、武装したパレスチナのテロリスト集団“黒い九月”がイスラエルの選手村を襲撃、最終的にイスラエル選手団の11名が犠牲となる悲劇 にゅるろぐ【2006/02/08 10:31】
2005年 アメリカ 公開日:2006/02/04 劇場鑑賞06/01/20           ミュンヘン   監 督 : スティーヴン・スピルバーグ   脚 異国映画館【2006/02/08 11:26】
久々に本気のスピルバーグは、やはり凄い。暗殺者になる使命を受け入れる事で、永遠の重荷を背負ってしまった一人の男の長く悲しい心の旅を描く、ある種のロードムービー。「ミュ ノラネコの呑んで観るシネマ【2006/02/18 12:08】